「バックギャモン」という名前、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。世界最古のボードゲームのひとつとして知られるこのゲームですが、その名前の語源については複数の説が存在し、長年にわたって議論されてきました。この記事では、最も有力な語源説をはじめ、世界各国での呼び名や歴史的背景まで、バックギャモンの「名前の謎」を徹底的に解説します。語源を知ることで、このゲームへの理解と愛着がさらに深まるはずです。
【結論】バックギャモンは「駒を戻すゲーム」を意味する英語が語源

結論から述べると、「バックギャモン(Backgammon)」という名称は、英語の「back(後ろ・戻る)」と、中世英語で「ゲーム・遊び」を意味する「gamen(またはgame)」を組み合わせた言葉であるというのが、現在最も広く支持されている語源説です。
この語源説は、ゲームのルールとも深く関連しています。バックギャモンでは、自分の駒が1個だけ置かれているポイント(ブロット)に相手の駒が入った場合、自分の駒が「バー」と呼ばれる中央のエリアに戻される(送り返される)というルールがあります。
つまり、「back(後ろに戻る)」という動作がゲームの核心的な特徴を表しており、それがそのまま名前に反映されたと考えられています。
参考:「backgammon」の語源と意味(motitown)

バックギャモンの語源|有力な3つの説を比較

バックギャモンの語源については、歴史的に複数の説が唱えられてきました。ここでは、特に有力とされる3つの説を順に比較・解説します。
各説にはそれぞれ根拠と弱点があり、現時点でも学術的に完全な決着はついていません。それぞれの説の内容と信憑性を確認していきましょう。
【最有力】中英語「back+game」説
最も有力とされているのが、中世英語(Middle English)の「baec(後ろ)」+「gamen(遊び・ゲーム)」を語源とする説です。
「baec」は現代英語の「back」の前身にあたる古英語・中英語の語形であり、「後ろ」「背後」を意味します。一方「gamen」は現代英語の「game」の古形で、「遊び」「競技」を意味します。
この2語が組み合わさって「backgammon」という競技名が成立したとされており、バックギャモンの歴史と起源を徹底解説した資料でも「最も有力な説」として明記されています。
この説が支持される理由のひとつは、「back」がゲームのルールと直結している点にあります。バックギャモンでは、相手に駒を打ち取られるとその駒をボードの出発点に戻さなければなりません。この「戻る」という動作がゲームの名称に組み込まれたと考えると、非常に自然な語源解釈といえます。
また、望月正行氏による語源考察においても、「このゲームは英語圏で名付けられた。『後ろ』(behindもしくはback)という意味の『back』と、中世英語で『ゲーム』を意味する『gamen』を源とする」と述べられており、英語圏での命名であることが強調されています。
ウェールズ語「bach cammaun(小さな戦い)」説
2つ目の説は、ウェールズ語に語源を求める説です。ウェールズ語で「小さい」を意味する「bach(バッハ)」と、「戦い・打撃」を意味する「cammaun(カマウン)」が組み合わさって「バックギャモン」になったとする考え方です。
任天堂の公式サイトでも「バックギャモンはウェールズ語で『小さな戦い』という意味」と紹介されており、一定の知名度がある説です。
しかし、この説には弱点もあります。ウェールズ語の「bach」の発音は「バック」というよりも「バッハ」に近く、英語の「back」との音韻的な対応が完全ではありません。また、「cammaun」が「gammon」に変化する音韻変化のプロセスについて、明確な史料的根拠が乏しいとも指摘されています。
バックギャモンの歴史に関する資料でも、「ウェールズ語説かサクソン語説かという議論が続いている」とされており、現時点では確定的な結論が出ていないことがわかります。
ラテン語・ゲルマン語の複合説
3つ目の説は、ラテン語やゲルマン語(サクソン語)に語源を求める複合説です。サクソン語の「bac(後ろ)」と「gamen(ゲーム)」を語源とする説がこれにあたります。
日本バックギャモン連盟(Japanese Backgammon League)の資料でも「サクソン語の後ろを意味する『bac』とゲームを意味する『gamen』に由来するという説」が紹介されています。
サクソン語はゲルマン語派の一言語であり、古英語・中英語とも密接な関係にあります。このため、「中英語のback+game説」と「サクソン語のbac+gamen説」は、実質的に非常に近い内容を指しているとも解釈できます。
ラテン語との複合説については、ローマ帝国時代にバックギャモンの前身ゲームが広く普及した歴史的背景も関係しており、複数のヨーロッパ言語が名称の形成に関わった可能性も否定できません。
「back(戻る)」が名前になった理由|ルールとの深い関係

バックギャモンの名前に「back(戻る)」という言葉が含まれているのは、単なる偶然ではありません。ゲームのルールそのものが「戻る」という概念と深く結びついているからです。
バックギャモンでは、相手の駒が2個以上重なっているポイントに自分の駒が止まると、その駒は「バー(Bar)」と呼ばれるボード中央の仕切りに置かれます。バーに置かれた駒は、次のターンで相手のホームボードから再スタートしなければなりません。これが「駒を戻す」という動作です。

さらに、「gammon(ゲーモン)」という言葉もゲーム内の重要な用語として現在も使われています。バックギャモンには勝利の形がいくつかあり、そのうちの一つが「ギャモン勝ち(Gammon)」です。これは相手が1個も駒をゴールさせていない状態で自分が全駒をゴールさせた場合に適用され、通常の2倍のスコアが与えられます。
つまり「Backgammon」という名称には、「back(戻す)」という動作と「gammon(ゲームの勝利形態)」という2つのゲーム概念が凝縮されているとも解釈できます。名前を知ることで、ゲームの本質がより鮮明に見えてくるのです。

世界各国でのバックギャモンの呼び名一覧

バックギャモンは世界中でプレイされているボードゲームですが、国や地域によって呼び名が大きく異なります。その違いは単なる翻訳ではなく、それぞれの文化・言語・歴史を反映したものです。
以下では、主要な国・地域ごとの呼び名とその背景を詳しく紹介します。
日本|盤双六(ばんすごろく)
日本では、バックギャモンに相当するゲームは古くから「盤双六(ばんすごろく)」と呼ばれていました。
「盤」はゲームボードを指し、「双六」はサイコロを使って駒を進める遊びを意味します。現代の「すごろく」とは異なり、盤双六はバックギャモンと同じように盤上で駒を動かして競う本格的なゲームです。
盤双六は飛鳥時代〜奈良時代(7世紀〜8世紀)ごろに中国から伝わったとされており、平安時代には貴族の間で広く楽しまれていました。しかし、江戸時代に入ると賭博性が問題視され、たびたび禁令が出されたことで次第に衰退していきました。
現在の日本では「バックギャモン」という英語名が一般的ですが、「盤双六」という伝統的な呼び名はゲームの長い歴史を物語る重要な言葉として残っています。
トルコ・中東|タヴラ(Tavla)
トルコをはじめとする中東・地中海地域では、バックギャモンは「タヴラ(Tavla)」と呼ばれています。
「タヴラ」はトルコ語で「盤・テーブル」を意味する言葉に由来しており、ゲームボードを指す言葉がそのままゲーム名になったと考えられています。
トルコではタヴラは非常にポピュラーなゲームで、カフェや家庭での日常的な娯楽として深く根付いています。ルールは基本的にバックギャモンと同じですが、トルコ独自のバリエーションルールも存在します。
中東地域全体でもこのゲームは広く普及しており、アラビア語圏では「タウラ(Tawla)」とも呼ばれています。歴史的に見ても、バックギャモンの前身ゲームがメソポタミア地域で生まれたとされることから、この地域との文化的なつながりは非常に深いといえます。
ギリシャ|タヴリ(Tavli)
ギリシャでは「タヴリ(Tavli)」という名称が使われています。トルコの「タヴラ」と語源的につながりがあると考えられており、「盤・テーブル」を意味するギリシャ語に由来しています。
ギリシャでもタヴリは非常に人気の高いゲームで、カフェや広場でプレイする光景が日常的に見られます。ギリシャのタヴリにはいくつかのバリエーションがあり、「ポルテス(Portes)」「プラキオト(Plakoto)」「フェヴガ(Fevga)」の3種類のゲームをまとめて「タヴリ」と呼ぶこともあります。
これらのバリエーションはそれぞれルールが異なり、ギリシャの豊かなボードゲーム文化を象徴しています。
その他の国の呼び名(フランス・ドイツ・ペルシャ)
フランスでは「ジャックポット・デュ・ティック・タック(Tric Trac)」という名称が歴史的に使われていました。17〜18世紀のヨーロッパではこの名称が広く普及しており、フランス語圏でのバックギャモン系ゲームの総称として定着していた時期があります。
ドイツでは「プッフ(Puff)」または「バックギャモン(Backgammon)」の両方が使われています。「プッフ」はドイツ語圏の伝統的な呼び名で、ゲーム中に駒を打ち落とす音から来ているとも言われています。
ペルシャ(現在のイラン)では「ナード(Nard)」と呼ばれており、これはバックギャモンの最も古い形式のひとつとされる「ナルディ(Nardi)」にもつながっています。ペルシャでは古くからこのゲームが楽しまれており、その歴史は数千年にも及ぶとされています。
| 国・地域 | 呼び名 | 意味・由来 |
|---|---|---|
| 英語圏 | Backgammon(バックギャモン) | back(後ろ)+gamen(ゲーム) |
| 日本 | 盤双六(ばんすごろく) | 盤上のサイコロゲーム |
| トルコ | Tavla(タヴラ) | 盤・テーブルの意 |
| ギリシャ | Tavli(タヴリ) | 盤・テーブルの意 |
| フランス | Tric Trac(トリック・トラック) | 駒の音から |
| ドイツ | Puff(プッフ) | 打つ音から |
| ペルシャ・イラン | Nard(ナード) | 古代ペルシャ語由来 |
バックギャモンの歴史|5000年続く世界最古のボードゲーム

バックギャモンの語源を理解するうえで、その歴史的背景を知ることは欠かせません。このゲームは約5000年の歴史を持つ、世界最古のボードゲームのひとつとされています。

世界遊戯博物館の資料によると、バックギャモンは古代エジプト王朝時代(BC.2950年〜)のレースゲーム「セネト(別名・ナイルギャモン)」をルーツとする最古の双六型ゲームとされています。
また、バックギャモンの豊かで魅力的な歴史によれば、ゲームの起源は今日イラクとして知られるメソポタミアにまでさかのぼるとされており、世界最古のサイコロが同じ地域で発見されていることとも符合します。
その後、ゲームはペルシャ・ローマ帝国を経てヨーロッパ全土に広まっていきました。

「バックギャモン(Backgammon)」という名称が英語圏で初めて記録されたのは17世紀ごろのことです。双六の歴史と文化によれば、17世紀から18世紀にかけてイギリスで最も人気の高いゲームとして隆盛を誇っていたことが記録されています。
現代では世界で約3億人の競技人口を誇るとも言われており、古代から現代まで愛され続けているゲームの普遍的な魅力を物語っています。

語源から読み解くバックギャモンの本質と魅力

「back(戻る)+gamen(ゲーム)」という語源は、単なる名前の由来にとどまらず、バックギャモンというゲームの本質的な面白さを端的に示しています。
バックギャモンは、チェスのような純粋な思考力のゲームでも、完全な運任せのゲームでもありません。サイコロという偶然性の要素と、駒の配置・移動の戦略的判断が組み合わさった「運と実力が絶妙に交差するゲーム」です。
「back(後ろへ戻る)」という要素が象徴するように、このゲームでは一見有利な状況が一瞬で覆されることがあります。駒を戻されるリスクを計算に入れながら戦略を組み立てる必要があり、それがゲームに深い緊張感と逆転劇を生み出しています。
また、世界各国で異なる呼び名を持ちながらも同じゲームとして愛されている事実は、バックギャモンが文化や言語を超えた普遍的な娯楽であることを示しています。語源を知ることは、そのゲームの文化的背景と本質的な魅力を同時に理解することにつながるのです。
バックギャモンの語源についてわかりやすく解説した動画もあります。
バックギャモンの語源に関するよくある質問

バックギャモンの語源についてよく寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。
Q. バックギャモンは何語ですか?
A: バックギャモン(Backgammon)は英語の言葉です。中世英語(Middle English)の「baec(後ろ)」と「gamen(遊び)」を語源とし、英語圏で命名されたとされています。ただし語源説にはウェールズ語やサクソン語由来という説も存在します。
Q.「gammon」とはどういう意味?
A: 「gammon(ゲーモン)」は、古英語・中英語で「遊び・ゲーム」を意味する「gamen」が変化した語です。現代英語では「gammon」は燻製豚肉(ハム)を意味しますが、バックギャモンの文脈では「勝利形態の一種(ギャモン勝ち)」としても使われます。ギャモン勝ちは相手が1個も駒をゴールさせていない状態での勝利で、通常の2倍スコアが与えられます。
Q. 日本ではバックギャモンを何と呼んでいた?
A: 日本では古くから「盤双六(ばんすごろく)」と呼ばれていました。奈良時代ごろに中国から伝わり、平安時代には貴族の間で広く楽しまれましたが、江戸時代に賭博禁止令の対象となり衰退しました。現在は「バックギャモン」という英語名が一般的に使われています。
まとめ|バックギャモンの語源を知ってゲームをより深く楽しもう

この記事では、バックギャモンの語源と名前の由来について詳しく解説しました。最後に要点を整理します。
- 最有力説:中世英語の「back(後ろ・戻る)」+「gamen(ゲーム)」が語源で、英語圏で命名されたとされる
- 他の有力説:ウェールズ語「bach(小さい)+cammaun(戦い)」説、サクソン語の「bac+gamen」説も存在する
- ゲームとの関連:「back(戻る)」はゲームの核心ルール(駒がバーに戻される動作)と直結している
- 世界各国の呼び名:トルコでは「タヴラ」、ギリシャでは「タヴリ」、日本では「盤双六」など、文化ごとに異なる呼び名がある
- 歴史的背景:約5000年の歴史を持ち、古代メソポタミア・エジプトに起源を持つ世界最古レベルのボードゲームである
語源を知ることで、バックギャモンというゲームの奥深さや世界各地に広がる文化的背景がより鮮明に見えてきます。
ぜひこの知識を胸にバックギャモンをプレイし、5000年の歴史をその手で体感してみてください。



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